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にせいの日記

「自分の好きなものってなんだろう?」という疑問を解決するために、気が向いた時に好きなことを書いてみて、「自分の好きなもの」をあぶり出そうと試みています。

なんだか気になる1089 ~科学として楽しむ数学~

この記事は、日曜数学アドベントカレンダーの9日目の記事です。
www.adventar.org


先日の第2回日曜数学会in札幌にて、「なんだか気になる1089」と題した発表をさせてもらいました。

※第2回日曜数学会in札幌についてはこちら
nisei.hatenablog.com

今日はその内容をご紹介します。

発表概要

1089×9=9801
すべてはこの数式から始まりました。
「ある数字に2以上の数字をかけたとき、その結果が元の数の逆順になる」ということについて、じっくり考えてみたよ、という自由研究の成果発表・進捗報告が今回の発表の趣旨でした。

発表スライド

slideshareに載せてます!

www.slideshare.net

なお、一部文字化けしている箇所がありますが、これは赤字の「済」の文字が入っていると思って見ていただければと思います。
 f:id:bluewindow:20161209080620p:plain:w200

内容のポイント解説

まず、発表時間5分(+質疑5分)の発表に対してスライド83枚というのは我ながらよくやったなと思います←
まぁそれはいいとして。

1089に9をかけると、逆順である9801になります。
同じようになる4桁の数字は他に、2178×4=8712というのがあります。
発表ではここをさらりと流しましたが、実はこの探索だけでも結構楽しかったです。
いくつか場合分けすれば条件を絞って手計算で見つけることができるので、気になる方はぜひやってみてください。

さらに、桁を増やして同じようになる数を探してみると、なんとも興味深い結果が現れます。
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式たちを眺めるだけでわくわくしちゃいますね!

さて、ここで「n進法」という考え方が登場します。(スライド16枚目)
これ、自分にとっては昔から法則の面白みを判定するためによくやる手段なんですが、馴染みのない人から見るとちょっと面白い発想であるようです。
そして自分としては正直、10進法以外では成り立たないような法則にはあまり興味が湧かないんですが、今回はたまたまこの発想と結果を面白いと評価してもらえる機会があったので、研究がここから先に進むことになりました。褒められたらがんばっちゃうよね。

スライド20〜27枚目にある結果は、一見するとただの文字列です。nの値によって出てくる結果の量は違いますが、パッと見ではそれ以上はよくわかりません。
しかしその結果をじーっと見つめていると、だんだんと、パターンが見えてきます。

この瞬間が、時間が、本当に楽しい!

できることなら、この結果を貼り出してそのまましばらくみんなでディスカッションするようなイベントを開催したいくらいです。

しかしまぁ日曜数学会では5分でまとめて発表する必要があったので、ここでは私の発見した法則をご紹介します。
単純ですが、それっぽいパターンをまとめてnで一般化していきます。

で、nでの確認を進めていくと、なんだか法則と法則がつながり始めます。
ここまでくると、先ほどまでただの文字列に見えていた結果の羅列が、どんどん分かれて見えてきます。文字通り「分かって」きたということなのでしょう。

発表・スライドは、統一定理kを見つけたところで終わりにして、残りを「未解決問題」として提示しています。
が、実はこのスライドを作っている間に、この未解決問題達の一部が解決(nでの一般化に成功)してしまうという事件などもありました。
とはいえ、未だにパターンの掴めない結果もあるので、これからも引き続きこの結果達は眺め続けていこうと思います。

本研究の醍醐味

日曜数学会の質疑の際にもコメントをいただいたとおり、実はこの発表には「こんな結果が出たよ」ということ以外に、もうひとつ主張が込められています。

それは
整数論は科学的に楽しめる
ということです。

そもそも、この研究を一番最初に発表したのは、札幌で行っている科学勉強会の場でした。そこでは「1089の科学 〜科学として楽しむ数学〜」と題して、ほぼ同じような内容を発表させてもらいました。*1

では、「科学的に楽しむ」というのは具体的にどういうことかというと、こういうことです。
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 ※科学勉強会でのプレゼン資料より

Eテレ考えるカラス*2で使われている「科学の考え方」の図ですね。
つまり「観察して、仮説を立て、実験して、考察する」、このサイクルが「科学的」なのです。

これを今回の自由研究に当てはめてみると、

  • 1089×9=9801を面白いと思う [観察]
  • 同じようになる数字が他にもあるにも違いない [仮説]
  • 調べてみる・見つける [実験]
  • 4桁以外でもあるに違いない [考察・仮説]
  • 調べてみる・見つける [実験]
  • なんだか法則性がありそうだ [考察・観察]
  • 一般のn進数でもあるに違いない [仮説]
  • 調べてみる・見つける [実験]
  • 法則性をさがす [考察]

ということで、まさにこの「科学の考え方」そのままであることがわかります。

整数論は、数学の中でも特に具体的な「整数」を扱います。
一般的な理論が提示された時にも具体例で確認することができるので、そういう意味では素人にも手が出しやすい分野と言えるでしょう。*3

私自身は、学生時代、数学よりも理科が好きな人間でした。大学での数学の授業などはほとんど聞いた覚えがありません…(なぜ単位が取れたのか不思議でならない)。
でもそんな人間でも、整数論は受け入れて、自由に楽しませてくれるのです。


そしてそんな自由研究をも受け入れてくれる(ような気がする)「日曜数学」という言葉は素敵だなぁとしみじみ思う今日この頃です。



日曜数学アドベントカレンダー、明日はHaru Negamiさん(数学カフェさん?)の「キラキラ輝くクリスマスにぴったりの結晶群のおはなし」だそうです!おもしろそう!

*1:今回のスライドも、科学勉強会で使用したスライドをベースに作成しています。ちなみに科学勉強会で発表した時のスライド数は94枚でした。

*2:Eテレ考えるカラス」については昔に書いた記事があるので興味がある方はこちらをご覧ください nisei.hatenablog.com

*3:もちろん、法則を証明することは別問題で、他の分野同様に整数論整数論の難しさや複雑さがあると思いますし、その深みや、とっつきやすさとのギャップにより、整数論は余計に面白く魅惑的に感じられるように思います。