にせいの日記

「自分の好きなものってなんだろう?」という疑問を解決するために、気が向いた時に好きなことを書いてみて、「自分の好きなもの」をあぶり出そうと試みています。

数学をよく知らない人にオススメしたい『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』

年末の帰省の際に面白い小説を読んだので、感想を書いてみます。

 

まずはこの本を読むきっかけになったブログについて。


おすすめ数学小説:ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 - tsujimotterのノートブック

うちは数学の勉強が得意というわけではないけれど、数学の話は筋が通っていることが多いので、そういう部分は好きです。

そしてこのブログでは、いつも難しげな数学を楽しげに紹介してくれるので好きです。

 

そんなブログで「数学がわかる・わからないに関わらず、万人が満足できる本」として熱く紹介されていたので、今年の帰省のお供としてこの本を選びました。

ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」 (ハヤカワ・ノヴェルズ)

 

 

「数学を使ったフィクション」ということで、小説とはいえ数学の内容が出てくるとなると、読みながら途中で寝ちゃう可能性も高いなーと心配していたのですが…

実際は、札幌から東京に向かう道中でほぼ一気に読んでしまいました。

すごく面白かったです。

 

物語の軸になるのは、数学そのものではなく「数学に取り組む人々」です。これが一番のポイントだと思う。

数学はあくまで「登場人物達が取り組んでいること」として出てくるだけなので、数学に関する知識がほとんどなくても、話の中で自然と最低限の知識だけはつきます。この知識のつけ方が、うまく言えないけど、とにかく自然です。だから、数学の話がわからなくても眠くならない。

「数学のことを伝えよう!」という目的で書かれた大抵の本は、その数学的内容の解説が中心になってしまい、逆にその解説が理解できないと不完全燃焼というか、例え物語を最後まで読み切ったとしても「楽しみきれてない」感が残ることが多いのですが、この本にはその不完全燃焼感が無いように感じました。

もう少し具体的に書かせてもらうと、例えばゴールドバッハ予想がどんな風に難しいのかとか、「解析的な手法」って一体なんなのかとか、うちにはおそらく正確には理解できていません。でも、この物語を読む分にはそれでいいのです。

そして、読み終えた後にはそれらの内容に関する「興味」だけが残るのです。(これって、数学への入口としてはかなり優秀だと思います!)

これが、この本を「数学に詳しくない人」に薦めたい理由。

 

では一方で、数学をある程度知っている人には物足りないかというと、そんなこともないようで。

実は、登場する数学者のほとんどが、実在の数学者なのだそうです。しかもキャラクター設定もだいぶ現実を反映したものになっているのだとか。

有名な数学者のエピソードがそこら中にちりばめられているので、本を読んだ後に別の機会で数学の話を聞いた時に「その人、知ってる!」という気持ちになるのも楽しいです。

 

あと細かいところですが、翻訳された本ならではの「若干わかりにくい会話」(文脈でなんとか理解できるかんじ/特に実際の会話でそんな話し方をされたらうちなら意味がわからなくてぽかんとしてしまいそうな問いかけ)が、まさに数学者と一般人の会話を再現しているようで、良い雰囲気を出してるなと感じましたw

 

そんな本を読み終えた今、次はゲーデル不完全性定理素数関連の話をもうちょっと読んだり聞いたりしてみたいなーという気持ちになっています。ものっっっすごく噛み砕いてもらわないとすぐ挫けてしまいそうだけど(^^;)

これが数学の世界に続く階段なのだとしたら、次の1段がどこになるのか知りたいところです。

 

同時に、こんな風に1段ずつのぼっていけるような階段が用意してあげることが、ある分野に対して、それを知らない人に興味を持ってもらいたいと思った時にやるべきことなのだなぁと思いました。