にせいの日記

「自分の好きなものってなんだろう?」という疑問を解決するために、気が向いた時に好きなことを書いてみて、「自分の好きなもの」をあぶり出そうと試みています。

素数大富豪の教え方

素数大富豪アドベントカレンダー、9日目!
adventar.org

8日目ははちさんの「合成数出しの戦術を考えたい」のはずでしたが…あれ…?*1

+++++

さて、「素数大富豪を人に紹介したいけど、うまく教える自信がない…」というそこのあなた!

今日はぜひこの記事を読んで、イメージトレーニングをしてください。そして、明日からは素数大富豪をいろんな人に広めてくださいね。

目次

なお、本記事ではトランプを使っての教え方をご紹介します。オンラインでの教え方については(あまり経験は多くないですが)要望があれば書きます。

また、教える側(あなた)は、素数大富豪のルールを理解しているものとして話を進めます。もしルールがわからない方は、先にこちらのスライドでも読んでルールをマスターしてください(宣伝)

www.slideshare.net

+++++

0.素数大富豪を教える楽しさ

素数大富豪に限らず、自分が楽しいと思うことを他の人に伝えて共感してもらうことからは、なんともいえない楽しさと充実感が得られます。
ただ、素数大富豪を人に教えるのは、実はなかなか手間がかかります。「素数」と聞くだけで嫌そうな顔をされたり、自分が面白いと思うルールを一生懸命説明してもなかなかわかってもらえなかったり。。
しかし、その先には相手の「素数を出して喜ぶ笑顔」や「今まで出会ったことのないものと出会ってキラキラと目を輝かせる姿」がきっと存在するはずです。多くの人にとって未知のゲームである「素数大富豪」の面白さを伝えるという、少しだけ高いハードルに、思いきって挑戦してみませんか?

あと、人に教えると練習相手が増えて戦略のパターンも増えるので、楽しみながら強くなれます

1.準備

素数大富豪を人に教えたいと思ったら、まずは

  • トランプ1組*2
  • 素数判定アプリinスマホ(またはwebページを閲覧できる環境)*3

を用意しましょう。人生、いつ目の前に素数大富豪に食いつきそうな人が現れるかわからないので、どちらも常に持ち歩くのがおすすめです。

2.基本のながれ

  1. 言葉巧みに「素数大富豪」というゲームに興味を持たせる
  2. 「実際にやってみた方がわかりやすいので、やりながら説明しますね」と言いながら軽くトランプをきり、手札を配る*4
  3. 自分の手札から何枚かとって見せながら、数の作り方を教える(101とか。ここで見せる数は素数でなくてもOK)
  4. ジャンケンで手番を決めて、ゲームを始める
    • 自分が先手なら、2枚出しの小さい数を出す
    • 初心者が先手なら、1~2枚で出してみてもらう
  5. 相手の様子を見ながらプレイする(勝っても負けてもOK)
  6. 「じゃあ次が本番で!」と言って2戦目を開始する
    • 1戦目での相手の様子に応じて、遊ぶルールを決める
  7. 相手が疲れた顔をしたらやめる(または甘いものを食べさせて少し休憩)
  8. 次に遊ぶ約束をとりつける

3.アレンジできるポイント

素数大富豪の難易度は、採用するルールによって調整が可能です。特に初回は、相手にあわせてルールをアレンジして臨みましょう。

  • 手札枚数
    • 最初の説明の時は5枚くらいで様子を見る
    • 3枚出しができそうなら7枚、さらにミスが少なそうなら11枚へ増やす
  • ペナルティ
    • 最初は「一律1枚」が無難
    • ただし、本来の「出した枚数と同じだけ引く」ルールにより生まれるドラマもあるので、終盤では本来のルールも紹介しておくと良いかも
    • 他にもやりようはあるかも?*5
  • 追加ルール:合成数出し/グロタンディーク素数切り(57)/ラマヌジャン革命(1729)
    • この3つに関しては、初心者には「追加ルール」という扱いで考えておく
    • 数学が好きな人や計算に抵抗がない人には2試合目から導入
    • 素数よりも物語を楽しめるタイプの人にも、57と1729はおすすめ
    • 合成数出しは、特に偶数を消費しやすい便利な具体例をあわせて教えるのが吉*6
  • 3人以上で遊ぶ際のゲーム終了のタイミング
    • 長引くと勝った人が暇になるので、基本的には1人あがったら終了とするのが無難
    • 経験者が先にあがった場合は、残った人でそのまま続けて、初心者にあがる機会を持たせるのも手。その際は素数判定員という名の盛り上げ役に徹するか、弱そうな方*7の味方についてヒントを出す


例として、実際のアレンジ例をいくつかご紹介します。

モデルケース(1) 20代文系女子(複数)

ボードゲームなんかは好きだけど、数学のことはさっぱりわからないぞ!というタイプの後輩達。
f:id:bluewindow:20211209212121p:plain:h150
楽しいゲームがあるからやろうよ~一緒に遊んで~ と誘い、追加ルールも含めて一通り説明。合成数出しは手札が偶数だらけになった時の対策として、小さな合成数(6とか8とか)だけ教えておく。指数出しはわかる人だけわかればOKとして、出し方を間違えてもペナルティは無しのルールで。3の倍数判定も初期に教える。

877を出しながら語呂素数の話をしたり、全出しに挑戦したりする場面で反応が良かったので、途中で593素数のスライドなども見せながら遊ぶ。語呂合わせができる名前で関連した素数を探索する時間などをとったところ、後日、自分の名前を冠した素数を見つけてきて報告してくれたりするようになりました。
数学は苦手でも「素数」だけなら抵抗なく受け入れてもらえるパターンは結構あるようなので、そういう相手には一旦、数学や計算とは切り離したものとして素数を紹介しましょう。

モデルケース(2) 小学3年生男子

かけ算・わり算ができるようになったばかりの小学生*8
f:id:bluewindow:20211209212515p:plain:h150
一緒に1泊旅行をする機会があったので、昼間のうちに「素数大富豪っていう面白いゲームがあるから夜にやろうね!」と約束をとりつける。移動の合間に「素数」の定義と3の倍数の判定法を教え、素数チェッカを紹介し、街中で目に入る数を指しては「あれは素数」「これは偶数」「じゃあそれは?」みたいな話をしまくる。
夜になったら、手札5枚・ペナルティ一律1枚・追加ルール無しで遊ぶ。2枚出しでもしっかり判定、当たれば一緒に喜ぶ。経験者は小さめの2枚出しor全出しの2択に徹する。

翌日は、宿を出たそばから「あれやりたい!素数なんとか*9」「今日はいつやる?」とせがまれるようになりました。
詳しい様子はツイート(スレッド)でご覧ください↓

今後も年1回くらい会えそうな気がするので、反抗期が到来する前には公式ルールを教え込みたいと思っています。

モデルケース(3) 70代女子

えーっと、母です。
f:id:bluewindow:20211209212731p:plain:h150
年末年始などに家族がプレイしている姿は何度も見せているのでルールは概ね把握しているが、自分でやったことはないという例。「めんどくさいゲームは無理」と言うものの、実は負けず嫌いなだけなので、やれば楽しんでくれるだろうと踏んで家族旅行の機会に布教。普通にやっても経験者の方が強いので、素数大富豪Lv.0を投入。

覚えなきゃいけないルールはいくつかあるけど、素数を覚えていなくてもカードを使いこなせば勝てるのがパッケージ版の良いところです。2枚出しの組み合わせ方すら覚えない母でしたが、最終的には素数に出会ってドヤ顔したり、勝ってバンザイするようになってくれました。楽しんでくれたようでよかった!

モデルケース(4) (たぶん)理系男子

私の経験ではないですが、アドベントカレンダー5日目に書いていたキグロさんの記事が大いに参考になります。
note.com

他にも、これまでの素数大富豪アドベントカレンダーではいろいろなタイプの人にあの手この手を尽くして素数大富豪を布教した経験談が多数綴られていますので、興味があればぜひ読んでみてください。
adventar.org

4.教えるときのコツ・心持ち

最後に、私が人に素数大富豪を教えるときに心掛けていることをご紹介します。

  • 喋りすぎない・説明しすぎない
    • 第一に、普通の人は、考えている時には黙ります。一生懸命考えているときに話しかけると気が散りますし、疲れます。初心者が自分の手札を見てじっと黙っている時は、こちらも黙って見守りましょう。無言で退屈されないか不安になるかもしれませんが、退屈した人は目線が手札以外のところに動くのでわかります。
    • また、相手に質問させる余地を残すことも大切です。質問を聞くことで相手の理解度を測れますし、「いい質問ですね!」と言われると相手は嬉しくなります。初心者から出やすい質問を挙げておくので、こういった内容は「あえて説明しない」という選択があることも覚えておいてください。
      • 1は素数
      • 素数は無限にあるの?
      • QKに勝てる数は無いの? →合成数出しを教えるチャンス!
      • 大富豪の8切りや革命みたいなルールは… →57/1729を教えるチャンス!
      • 素数になる法則があるのでは?
      • 簡単な判定方法があればいいのに →3の倍数判定を教え、余裕そうなら1001チェックを教える
      • 素数を覚えてる人が強いゲームでしょ →素数との出会いの面白さを見せつけるチャンス!
  • 時間をたっぷりとる
    • 素数大富豪は覚えるのにも普通にプレイをするのにも基本的に時間がかかります。途中で終わってしまうとただ「覚えることの多い難しいゲーム」と思われてしまう可能性があるので、教えるのは時間があるときにしましょう。
  • 適度に助言する
    • 3の倍数判定ができそうな人には、素数を出したら「3の倍数大丈夫ですか?」と一声かけるようにすると、2・3・5の倍数を避けられるので成功の確率が上がります。
    • 一方、グループ内で力量差がありそうな時に、数学やゲームが得意そうな人がうっかり偶数や3の倍数を出すというハプニングは、場が盛り上がり、得意でなさそうな人も勝機を見いだすきっかけになります。こういうときは助言しません。
  • とにかく相手の様子を見る
    • 自分(教える側)の手番とはすなわち、いろいろなプレイの仕方を見せて、相手の興味のポイントを探るチャンスです。例えば以下のようなことをやって相手の反応を見てみましょう。
      • 相手があまりチャレンジしなければ、自分は大きな素数に出会いにいく
      • 相手が覚えやすそうな札を出す(特徴的な素数・語呂合わせなど) →素数に興味を持って覚えようとするタイプか、愉快な語呂合わせを気に入ってくれるタイプか
      • 相手の出した素数の上位互換を出す →上位互換であることに相手が気付くかどうかがポイント。こちらから「上位互換ですよ!」と言って出してしまうとマウントをとっているだけに見える危険性があるので注意。
      • 57・1729・合成数出しを華麗に使いこなす
    • いろんなパターンのプレイを見せようとすると自然と縛りプレイになるので、わざと手加減しようとするよりこちらも相手も楽しめます。
  • 経験者が2人以上参加する場合は味方につけておく
    • 初心者に教えるにあたり、同席する経験者は一番の敵です。事前に作戦を共有して味方につけておくか、無理なら別テーブルで遊んでおいてもらいましょう。


+++++

先日の素数大富豪研究会2021で行った『素数大富豪の普及に有用な情報を集約する試み』という発表では、誰でも手軽に人に教えられるような環境を整えることの必要性を語らせてもらいました。

本記事はまだまだ荒削りなテキスト記事なので、発表の中で理想として掲げたものにはほど遠いですが、しかしこういうものをコツコツと書き溜めることが次のコンテンツ制作に繋がることを期待して、今後も少しずつ書いていきたいと思います。

みなさんの経験談や知見も引き続きどんどん共有してくださいね!


adventar.org

*1:戦術を練っている最中かと思いますので、気長にお待ちしてます!

*2:ジョーカーは2枚欲しいです。カードは、汚れにくい・破れにくい・安価なものがおすすめです。あまり大事なトランプを持ち歩くと、きれいな場所でしかやりたくない/信用できる人にしか触らせたくないという気持ちになります。ただ一方で、信用できる人に対しては、自慢のトランプの話題からさりげなく素数大富豪の話を切り出すという手法もあります。

*3:素数判定アプリは、iOSなら素数チェッカ、Androidなら素数大富豪ディーラーがおすすめです。webサイトでは、tatyamさんの素数チェッカー★やtsujimotterさんのLenstra's algorithm(楕円曲線法)が使えます。

*4:手札を配り始めるタイミングとしては「手札からカードを並べて素数を作って出しあいます。先に手札を全部なくした方が勝ち、というゲームです。」くらいまで説明して、相手が「ふぅん?」という顔をしたらもう配り始めてOKです。このタイミングを逃すと「難しいゲームだな」と思われる危険性が上がります。

*5:ペナルティに関して、これはまだ実践したことのないただのアイデアですが、計算が苦手な人に対しては、特定の数(例えば13)より大きい数でしか割れなければペナルティなしでもOK(希望があれば引いてもOK)にするという方法もあるかもと思ってます。

*6:合成数の入門は、文系なら2×5=10や2×43=86、理系相手なら2^8=256、2^10=1024辺りがおすすめです。

*7:子供と大人なら子供、理系と文系なら文系など

*8:知人の子。得意科目はプログラミング、苦手科目は外国語とのこと。

*9:彼に教えてみて初めて気付いたんですが、「素数」も「大富豪」も知らない子供にとっては「素数大富豪」という名前がなかなか難しいようでした。口頭で話すばかりで一度も文字で見せなかったこともあってか、旅行中は「そすうなんとかごう」「なんとかなんとか」と呼ばれてました。笑